東大の現代文の難しさは、本文中のキーワード、キーセンテンスが非常に少ないということです。しかも、傍線部の近くにキーワードがあるのではなく、本文全体に散らばっています。傍線部を含む形式段落を読んだだけでは記述答案を組み立てることができません。本文全体にちらばっている少ないヒントを手がかりにして、解答を練り上げることが必要です。
難しさの二つめは、解答の指定字数が少ないことです。設問に合う答えを書こうとすると100字程度かかるのですが、それを40~50字で説明することを求められています。キーワードを押さえつつ、一般化した表現で解答を構成しなくてはなりません。

生徒たちが苦労しているのは、指定字数に合う答えをつくることです。設問にあう答えを100字~200字で書くことはできても、50字前後の字数に削る作業が難しく、悪戦苦闘しています。語彙量を厳しく問われる入試問題ともいえるでしょう。東大の現代文をみると、【書く】という訓練を地道に積み上げることを受験生に要求しているように思われます。

当塾の「東大の現代文」の授業は、完全個別授業です。 まず、本文を音読させます。東大受験生であろうと(東大受験生だからこそ)、必ず音読をさせます。音読で生徒の語彙量がほぼわかりますので、それに基づいて授業を組み立てます。今どきの高校生は、音読ができません。読めない漢字が多く、語句の切れ目がわからないのです。これは、語彙量が大きく低下しているためと考えられます。読めない語句があったときは、必ず授業で読み方と意味を説明します。読めない語句がたくさんあっても気にせず、音読しながら過去問に触れていくことが大切です。

音読後、設問を一題ずつ解いていきます。どの生徒も、はじめは全く答えを書くことができません。設問の意味がわからないことと、設問の要求するキーワードが本文のどこにあるのかがわからないためです。また、語彙量が少ないため、指定字数におさめることができません。当塾入会後2カ月間は、「書けない! 東大、むずかしい!!」と落ち込む授業が続きます。しかし、そんなことは気にせず、ひたすら、【記述作成→添削→書き直し】をくり返します。入塾して3か月が過ぎると、少しずつ記述答案が仕上がってきます。このあたりから、授業が楽しくなってくるようです。
東大の現代文は、『難問』というよりは、むしろ、『良問』といえます。手のつけられない難問というわけではなく、訓練を積み上げることによって解けるようになる良問なのです。こつこつと記述の添削授業を積み上げることによって、出題者の設問意図を理解し、定められた字数で答えを書くことができるようになります。 「書いては直す」という地道な訓練を積みあげることが何よりも大切ですし、東大現代文の出題者は、このような「地味な」努力を受験生に求めているように感じられます。

季節のめぐりを「回帰する時間」ととらえ、近代的な時間感覚との違いを述べた文章です。 日本人が無意識にもっている時間感覚を平易な表現であらわしているため、生徒たちにとって取り組みやすい文章です。設問の意図にあう答えを書きやすい設問ですので、東大の現代文への畏怖感を払拭できる良問といえます。
心臓死と脳死の間を「中間的身体」と定義し、自己の固有性を考えさせる文章です。 指示語と接続語をきちんとおさえていくことで、設問の要求を満たす答えを書くことができます。読解の基本を丁寧に押さえていくことの大切さを徹底的に教えることができる良問です。
